第43回世界遺産委員会にてサンボー遺跡の審議

 

アゼルバイジャンの首都バクーにて,第43回世界遺産委員会が開催されています。7月3日より保全状況報告の審議に入っていますが,カンボジアのサンボー・プレイ・クック遺跡群についても審議が行われました。

この遺跡は2017年に世界遺産一覧表に記載されましたが,State of Conservationというカテゴリーに所属しており,締約国から委員会への報告が求められる対象とされています。

昨年12月に提出されたカンボジア政府からの報告に対して,諮問機関であるイコモスからはおよそ以下の事項について要請が示されています。

 

・世界遺産としての価値の所在を明確なものとし,その価値を確実に保護するための仕組みを確立すること。

・応急処置的な修復計画の詳細を含む包括的な保全計画を策定すること。

・観光管理計画を更新すること。その計画には具体的なアクションプランとタイムフレーム,そして予算的な裏付けを示し,必要な人材育成も含むべき。

・来訪者に対する倫理規定を定めること。また,コンポントム博物館とサンボー来訪者センターの改善計画も含めること。

・盗掘防止のための手段を策定すること。

・定期的で効果的なモニタリングの手法を定めめること。その対象には遺構の保全状況の他,居住地区の状況,古代の水利構造,来訪者の統計情報,住民参加の状況,遺跡周辺の各種環境要素を含めること。

・現在は寺院地区に世界遺産は限定されているが,長期的な資産範囲の拡張計画に要する資料作成とその評価を進めること。

 

などです。

これらの要請を承認する形で委員会では決議がされました。最終的な決議文では,登録後のカンボジア政府の努力を称賛するための文言が加えられましたが,いくつかの課題にはより本格的な検討が必要とされるところです。

 

来月にはこの遺跡群への調査を予定しているところですので,ぜひこうした課題に対する検討も行いたいと考えています。