下田建築史研究室の目的

建築遺産の価値の発見-保存-活用

本研究室は建築遺産の価値を明らかにし,それを保存し,さらに活用していくための理論や方法について探求することを目的にしています。


建築遺産としての対象は多様です。現役で使用されている伝統的・歴史的建築や,それらがある地区にまとまって特徴的な景観を形成している建築群。あるいは既に当初の機能を失った建築や地下に埋もれた遺構,また廃墟となった都市や宗教施設といった遺跡群なども対象とされます。さらに,建築遺産には木造や石造,土造や草造の自然由来の材料による構造物から,コンクリートや鉄,ガラスといった近代化がもたらした材料によるものまで多様なものが含まれます。


研究の対象とされる建築遺産は,社会的に重要性を有しているものばかりでなく,個人的な関心や興味によって見出されることもあるでしょう。こうした建築遺産と対峙し,その価値を発見し評価することから研究は開始されます。建築遺産が内在する価値は,歴史的な価値ばかりではありません。今日的な資源としての価値も重要です。建築が教育や観光,地域再生等にもたらす効果は計り知れないものがあり,そうした価値を発見し,あるいは創造していくことが近年ではますます強く求められるようになっています。


建築の価値を発見し,評価するための調査の手法は多様ですが,建築とその環境を子細に観察し,計測し,記録し,また関係者から情報を収集していくことが常にベースとなる作業となります。従来のマニュアルな手法と,新たなテクノロジーを駆使して対象とする建築遺産の価値の評価や解明に挑戦します。


明らかにされた建築遺産の価値を,保存し活用することが次のステップとなります。対象となる建築によって,保存し活用するための方法には,異なる最適解が想定されます。保存と活用は時に相反する行為を必要とすることもありますが,活用にあってもその本質的かつ最終的な目的は常に建築遺産の保存であり継承となります。保存し,継承の自立性を確保するためには,時に大胆な活用も許容されることになるでしょう。

 

価値を保存し,活用するための方法は,建築遺産によって様々ですが,主に以下のような手立てがあります。 (以下の和英の対応は暫定的なものですので注意してください)


○日常的な管理を行うにとどめて現状を維持する(preservation/maintenance

腐朽の速度を遅らせる保存処置や構造補強を行う(conservation

より良い状態に戻すために修復する(restoration

当初の姿や最も高い価値を有する状態に再建・復元・再生する(reconstruction/rehabilitation

当初の姿や最も高い価値を有する状態を表示する(display

建築の価値を伝達するための設備や施設を追加する(facilitation

建築の機能を変更・追加するために改修する(renovation

建築空間を新たな用途も含めて積極的に利用する(utilization


前者から後者にかけて,保存からより積極的な活用へとおよそ順番に並んでいますが,ここで記した他にも様々な建築遺産への介入の手段があり得ることでしょう。特に近年では,利用のあり方は多様化し,伝統的な建築のユニークベニューやMICEといった短期的なイベントへの使用も積極的にされるようになっています。また,建築遺産への宿泊をはじめとする様々な体験活動は,建築遺産を直に深く体験し,理解する上で,効果的な手段として取組みが活性化しています。加えて,価値を伝達するための整備のあり方は,デジタル技術の導入によって様々な可能性が実現しており,また建築遺産に付属する博物館等の施設とのより有効な連携のあり方も充実してきました。

 

本研究室では,建築遺産の価値を学術的な体系に基づき捉えた上で,それらの保存と活用にかかる様々な今日的な課題に焦点を当てて研究に取組み,社会に有効な建築遺産のあり方を模索していくことを目標としています。

Aims of the Shimoda laboratory of Architectural History

Evaluate-Conserve-Utilize of Architectural heritage

 

Aims of this laboratory is to decipher the essential values of the historical and traditional architecture and city, and consider the methods for preserving, reconstructing, rehabilitating, and utilizing these values.

Architectural heritage has distinctive designs, structures, and spaces under various historical backgrounds and settings. We try to analyze and clarify these features by various approaches including traditional manual way and/or advanced technologies. In addition, the condition of the historic buildings is various state of conservation; well preserved condition, state of the necessity under the urgent restoration works due to material deteriorations or structural damages, recommended state of reconstruction, state of buried structure or foundation in the accumulated soil, and so on. We will consider the adaptive and appropriate methods for preserve and transfer the significant values of these architectures to the present and future society. Our goal is to find the way and state of architectural heritage to impress people.

 


2013-2015年の下田建築史研究室のブログはこちら

下田建築史研究室:筑波大学 人間総合科学研究科 世界遺産専攻