Work 2: バイヨン寺院の修復事業

日本国政府アンコール遺跡救済チームの第3、4事業フェーズ(2005-2018)では、それまでの事業で形成された修復技術と人材を活かした継続的な修復工事、より高度な石積み建造物としての安定化のための研究、寺院の歴史と構造の解明、遺跡の持続的な保存と利用方法の実践的試みに取り組みました。

 

1.バイヨン南経蔵、外回廊の修復工事

バイヨン寺院内でも構造的な変形が進んでおり、また崩落石材からの部材同定によって当初の構造に近い形で再建できる可能が高いと考えられた南経蔵と外回廊の修復工事を行いました。

 

2.バイヨン寺院中央塔の構造的安定化の研究

寺院中央に位置する高さ42mの石積みの中央塔は、過去にフランス極東学院によって部分的な再構築と補強工事が行われていますが、構造的な不安定性が指摘されてきました。この寺院の構造的安定性を評価するために、塔直下の発掘調査、基壇内部のボーリング調査、塔の精緻な形状記録、挙動観測等を行いました。

(バイヨン中央塔の研究についてはこちらのブログにて紹介をしています。)

 

3.バイヨン寺院の増改築の解明にかかる考古学的研究

複数回にわたる改変の末に現在の姿に至ったと考えられるバイヨン寺院の改変の過程をより詳細に明らかにするための発掘調査を境内各所で実施し、特に後期ステージのより詳細な様相について明らかにしました。

 

4.バイヨン寺院本尊仏の再設置にかかる仏像制作

バイヨン寺院はアンコール遺跡の数ある寺院の中でも本尊が確認されている例外的な寺院です。過去に中央塔の直下より出土したこの仏像は、高さ4.7m、重さ約15トンという巨大なもので、現在ではアンコール・トム内のある寺院に安置されています。この仏像のレプリカを制作し、バイヨン寺院に安置する構想の下、仏像制作に取り組みました。

 

5.遺跡修復の地域と観光客への公開・交流事業

遺跡修復の現場を地域学生を中心とした住民や世界各国からの来訪者の学びの場とするために、積極的にパブリック・ヘリテージの機会を設けました。この取り組みはローカルNGOである「アンコール人材養成支援機構」と共同で実施しました。

 

6.官民連携のプログラム形成

日本国政府による国際文化協力として行われている事業の一部リソースを利用しつつ、民間企業からの支援と連携したプログラムとしてバイヨン寺院外回廊の石造物であるナーガ・シンハ像の修復工事を実施しました。このプログラムは「日本ユネスコ協会連盟」と連携して取り組みました。

(詳細はこちらよりご覧ください)