歴史的建造物や建造物群地区の活用

国内外の歴史的な建造物や歴史地区の活用に関する研究に取組んでいます。伝統的建造物群保存地区における修理や修景の実態や課題,日本遺産による歴史的な素材の再発見やそれらの関連付けの効果,世界遺産においては真実性を担保した上での活用のあり方,持続的な建造物の保護に必要とされる活用や地域参加の方法,などを明らかにするための調査に取組んでいます。

東南アジアの建築・都市

東南アジアの建築と都市に関する研究に取組んでいます。特に,今日のカンボジアを中心に,タイ,ラオスなどに広がる古代アンコール王朝の建築と都市に関する研究を継続しています。


以下のテーマについて今後も研究を深めていきたいと考えています。

  • サンボープレイクック遺跡を中心とするプレ・アンコール時代の建築と都市の研究
  • アンコール遺跡群の都市形成や構造に関する研究
  • アンコール王朝の地方都市に関する研究(コー・ケー遺跡群,プレア・ヴィヘア遺跡群,ワット・プー遺跡群,バンテアイ・チュマール遺跡群など)
  • アンコール王朝のネットワークに関する研究
  • 建築の工法と施工組織に関する研究
  • 東南アジアにおいてインド化したアンコール王朝の周辺勢力による建築文化の受容に関する比較研究(チャンパ・パガン・ドヴァラヴァティなど)

*サンボープレイクック遺跡群では,建築や考古学研究,煉瓦造祠堂の修理工事を実施しています。この事業の概要を紹介するパンフレットはこちら

 

*サンボープレイクック遺跡群では,複数の煉瓦造祠堂の室内において発掘調査を行い,収集された石材片を修復し,組み立てることで石製台座の復元工事を行いました。このプロジェクトに関する報告書はこちら

組積造建造物の保全工学

石造や煉瓦造の建築の保存や修復技術に関する研究に取組んでいます。これまでに,アンコール・ワット北経蔵,バイヨン寺院南経蔵,バイヨン寺院外回廊,サンボープレイクックN1祠堂の修復工事に従事しました。

  • 修復にあたっては,事前に記録,観測,構造・材料・基礎に関する診断が必要である他,建築や美術的観点から対象遺構の価値を見極めて修復設計が必要となります。
  • 修復工事中には,現場での施工管理はもちろん,工事により得られた知見に基づき,計画を柔軟に修正をしていくことが必要です。
  • 修復工事の終了後には,その成果を共有するための報告書の作成,定期的なモニタリングを継続し,その評価を後世にゆだねるための資料を整えることも求められます。

このように,組積造建造物の保全工学は,保存科学という理論的な探求と同時に,極めて実践的なノウハウが求められるものであり,さらには事業全体を運営能力の継承も求められます。

 

 

*インドネシアの世界遺産であるボロブドゥール寺院では,1970-80年代に実施された国際的な修復事業が行われました。その後,約30年を経て,現状の石材や構造評価を行い,今後の観測,保存処置,修復工事の必要性とその技術的な手法を検討するための事業を行いました。この事業の概要を紹介する冊子はこちら

世界文化遺産学

世界文化遺産学は,文化遺産学の一部であると位置付けることも、その全体を包括しつつ、より国際的な広がりを持つものと位置付けることも可能です。日本国内の文化財行政や文化財保護に係る技術の蓄積と,国際的な文化財に対する蓄積とが接する最前線を形成する学問と捉えることもできるでしょう。時に,そこでは不調和な衝突が生じることもありますが,必ずしもどちらかが絶対的な正であると判断が下せないこともあり得ます。私がこの分野において特に興味を持つテーマには次のようなものがあります。

  • 世界遺産における整備や復元と真実性の維持
  • 世界遺産とそれ以外の文化財の一体的な保存管理と価値の伝達方法
  • 世界遺産の価値を保全するための評価方法
  • 世界遺産一覧表の信頼性向上と最終到達像
  • 世界遺産の「顕著な普遍的価値」の証明手段

これらのやや限定されたテーマとは別に,建築やそれを含む都市や集落の保存・整備・価値伝達・住民参加など,幅広く関心を持っています。