Expert program for exchanging and Studying the protection and research of the Urban typed Archaeological sites

5 experts of NASPK were invited to Nara, and visit archaeological sites/research centers/museums/historical sites/reconstruction buildings for exchanging and studying the idea and mehod for conservation and management of urban typed archaeological sites. (from 15th to 23rd October, 2022)

サンボー・プレイ・クック国立機構に所属する専門家5名を奈良に招聘し、都市型遺産の保存・管理、調査・研究に関する情報交換と学習プログラムを実施しました。奈良県立橿原考古学研究所と奈良文化財研究所をはじめとする多くの方にご協力をいただきました。


カンボジア人招聘者5名

  • Phann Nady:カンボジア文化芸術省サンボー・プレイ・クック機構総裁
  • Chan Vitharong:カンボジア文化芸術省サンボー・プレイ・クック機構、考古保存局、局長
  • Em Kimsreang:カンボジア文化芸術省サンボー・プレイ・クック機構、土地住民管理局、局長
  • Chea Sopheary:カンボジア文化芸術省サンボー・プレイ・クック機構、観光開発局、局長
  • Seng Chantha:カンボジア文化芸術省サンボー・プレイ・クック機構、環境研究局、副局長

 

日本人協力者一覧

本村充保:奈良県文化財保存課 調整員(橿原考古学研究所 調査部 調査課 総括研究員)

河﨑衣美:橿原考古学研究所 企画学芸部資料課主任研究員

前田俊雄:橿原考古学研究所 調査部 調査課 主任研究員

絹畠 歩:橿原考古学研究所 調査部 調査課 主任研究員

内藤元太:橿原考古学研究所 調査部 調査課 主任技師

鈴木一議:橿原考古学研究所 調査部 調査課 指導研究員

岡田憲一:橿原考古学研究所 調査部 調査課 第二係長

小倉頌子:橿原考古学研究所 企画学芸部 資料課 技師

鈴木朋美:橿原考古学研究所 企画学芸部 学芸課 主任研究員

岡見知紀:奈良県 文化・教育・くらし創造部、橿原考古学研究所 主任研究員

庄田慎矢:奈良文化財研究所 企画調整部 国際遺跡研究室 室長

山藤正敏:奈良文化財研究所 都城発掘調査部 主任研究員

濱松佳生:奈良文化財研究所 飛鳥資料館 キトラ古墳壁画保存管理施設 アソシエイトフェロー

清野陽一:奈良文化財研究所 飛鳥資料館 主任研究員

西原和代:奈良文化財研究所 企画調整部 国際遺跡研究室 アソシエイトフェロー

岩戸晶子:奈良文化財研究所 企画調整部 展示企画室 室長

佐藤由似:奈良文化財研究所 企画調整部 国際遺跡研究室 主任専門職

杉山 洋:龍谷大学 教授


16th October

関西国際空港到着後に近つ飛鳥博物館を視察しました。


17th October

奈良県内の代表的な寺院建築として法隆寺、唐招提寺、東大寺(東大寺ミュージアム)訪れ、前日の古墳時代から飛鳥時代、奈良時代への歴史変遷や寺院建築や伽藍の展開、また木造建築遺構の伝世や修理について学びました。

 


18th October

橿原考古学研究所が実施されている3か所の発掘調査現場を訪れ、日本における行政発掘と学術発掘の考え方や調査の方法・体制について学びました。飛鳥宮跡では、長期にわたる継続的発掘調査の方法や情報蓄積のありかた、飛鳥京苑池においては、発掘された苑池に予定されている今後の復元計画やその方法を学びました。

  • 観音寺本間遺跡(弥生時代の墓域、方形周溝墓)
  • 曽我遺跡(古墳時代の玉作り遺跡)
  • 飛鳥宮跡・飛鳥京跡苑池
  • 苑池現場情報提供施設
  • 水落遺跡

19th October

橿原考古学研究所と付属博物館を視察させていただきました。

研究所内では、研究所の歴史や体制、開発事業にあたって事前発掘調査を要する案件の選定業務のあり方を学んだ後に、発掘現場で出土した土器を中心とした遺構について、洗浄・接合・図化(実測とデジタルトレース)・写真撮影・保管といった一連の流れを所内の巡って視察させていただきました。

また、遺物の保管、各種図面資料の保管、写真データの保管とそれらの記録管理システムを学び、長期的研究をシステマティックに管理し、蓄積する方法について学びました。

昨日訪れた発掘現場における過去の報告書を事例として、報告書の構成や各種分析の内容についても詳細を伺いました。

保存科学棟では、主に金属品と木製品の分析と保存処置の方法について学んだ他、土層剥ぎ取りの方法や材料についても学びました。

 

付属博物館では、一連の展示室を視察して、展示品についての解説をいただくとともに、展示の方法や企画展示の計画方法についても教えていただきました。また、博物館のバックヤードを視察し、貴重出土品の収蔵方法や学芸員室での業務についても説明いただきました。


20th October

奈良文化財研究所からのご協力を得て、藤原宮跡資料館と藤原宮跡、キトラ古墳壁画保存管理施設、飛鳥資料館を訪れ、各施設での説明をいただきました。

藤原宮跡資料館では、展示室の視察の後に、土器・瓦・木製品・石製品・金属製品の各研究室にてそれらの分析と保存方法についてご教示いただきました。藤原宮跡資料館は人員体制としては、今回視察したサンボー・プレイ・クック国立機構とおよそ同規模であることから、直接的に参考にすることができる研究と展示施設であったと思われます。

藤原宮跡では、大極殿跡周辺の発掘の経過や最近の調査結果について教えていただきました。

キトラ古墳壁画保存管理施設では、特別見学の枠をとっていただき、保管している石室蓋下面の壁画を見学させていただきました。また最新の展示の方法や空間構成についても学びました。

飛鳥資料館では、考古学資料の展示室と山田寺の出土遺構の展示室、それと準備中の企画展示室にてご説明をいただき、サンボー・プレイ・クック遺跡とほぼ同時代の日本における様相について学びました。


21st October

奈良文化財研究所のご協力により、平城宮跡における来訪者への多様な情報提供のあり方について学びました。平城宮跡資料館といざない館においては、平城京の歴史や平城宮跡の発掘成果を教えていただくことに加えて、ここ数十年で展示空間や手法がどのように変化したのかについてご教示いただきました。また、平城宮跡遺構展示室における露出展示や、各種の平面・立体遺構表示、朱雀門や東員庭園による復元展示など、多様な遺構表示の方法について各所を巡って学ぶことができました。建築遺構においても、朱雀門、大極殿、大極門においてそれぞれ異なった復元根拠と構造補強の考え方に基づいて復元工事が実施されていることについて学びました。

平城宮跡は長期的な整備計画にもとづいて、全体を複数のゾーニングに分けて整備事業が進められていますが、こうした事業を実施するための技術・考え方・体制・予算・施設などを総合的に考え、カンボジアの都市型遺跡において今後の計画を立案していく上で、多くの手がかりを与えてくれるものであり、現場の視察後には招聘者間で様々な議論をすることとなりました。


22nd October

今年オープンしたばかりの新しい文化施設である、奈良歴史芸術文化村を訪れました。文化遺産の修復現場を生で見学することのできる新しいタイプの施設で、建造物、仏像、絵画、考古遺物の修理工房についてそれぞれご説明をいただきました。今回は仏像や絵画の修理について学ぶ機会がなかったので、建造物や考古遺物とはまた違った技術や専門的工房の様相について触れることのできました。

また、奈良県の指定文化財を対象とした展示施設もあり、日本における文化財行政や文化財類型について学ぶ機会となりました。加えて、芸術施設における幼児・児童対象の体験プログラムやアーティストの滞在型アート制作プログラムなど、興味深い試みについても学ぶことができました。

その後、大野寺、室生寺などを見学し、秋の深まりにはまだちょっと早かったものの、美しい自然と歴史の調和を体感することができました。

 

1週間程度の短いプログラムではありましたが、サンボー・プレイ・クック国立機構の方々には都市型の文化遺産の保存や調査に必要とされる長期的な方法や体制づくりを考えるうえで有益なものとなればと思っています。多くの方々にご協力をいただきました。改めて感謝を申し上げます。