アジア太平洋地域の遺産管理と教育

国際オンラインカンファレンス「アジア太平洋地域の遺産管理と教育」が〈WHITRAP〉の主催により4月17日に開催されました。

 

今年度より中国、韓国、シンガポール、タイ、日本の教育機関等が連携してオンラインで遺産教育のプログラムを学生に提供するフレームワークを構築する計画で、その第一回目として実施されたカンファレンスです。

 

150名程のオンライン参加者を得て、3時間以上にわたり、各参加組織の代表から講演と意見交換が行われました。

各講演では、アジアの各地の遺産は多様な現状をかかえつつも、歴史・気候・思想においてアジア的共通性があり、これを共有していくことで多様な課題にともに取り組んでいくことができる可能性が感じられました。このネットワーキングによって、遺産認識、遺産の管理や保護のあり方、そして遺産にかかる多様な課題への対応や、人材育成の手法の共有化などが期待できます。

 

世界遺産という観点からすれば、東アジアや東南アジアの各国は世界遺産の制度を取り入れることで、各国の遺産保護の仕組みや世界への発信が強化されてきた側面がある一方で、世界遺産のシステムと各国の遺産管理の制度や遺産への認識においてはギャップがあることも認識されるようになっています。また、特にアジアでは急速な開発圧力と遺産保護との適切なバランスを実現するためのジレンマを抱えていることが多く、こうした進行形の課題に実務的・思想的に取り組んでいくプラットフォームになるかもしれません。

 

特に印象的だったのは、アジア各国において遺産保護の教育は、既存の建築や都市計画の分野が担うことが多く、やはり建築と都市の破壊・更新をいかにして抑え、それらを保存・利用することで、各地の歴史を継承していくのか、という課題へ注目度が突出しているところです。もちろん、この観点は重要ですが、その周辺の課題を包括的に捉えつつ課題に向き合っていくために、より学際的な取り組みが求められているように感じます。

 

今後はこの枠組みにおいて各大学の教員と学生が参加してワークショップを開催していく予定です。