
歴史と現代の多様な交錯
南イタリアの歴史都市を巡る調査記
青い海と険しい崖に抱かれたアマルフィ海岸、白亜の家々が並ぶプーリアの村々、そして石造りの洞窟都市マテーラ。イタリア南部には、古代から続く歴史の層が現代と交錯する魅力的な街が点在しています。

今回の調査では、ナポリを起点に、ピアニッロ、ポジターノ、アマルフィ、ラヴェッロ、ヴィエートリ・スル・マーレ、マテーラ、アルベロベッロ、ロコトロンド、グロットレを訪れました。さらに、ギリシャ・ローマ時代の遺跡であるペストゥムやポンペイにも足を運び、これらの都市がどのように時間とともに変遷し、現代の生活や観光と交わっているのかを探りました。
ナポリ。表と裏の姿が強いコントラストをなしているイタリア南部の拠点都市。スカッパナポリを含む中心部とその北方エリアを数日間にわたって歩きましたが、歴史地区と周辺地区は濃厚な生活に満ちています。年末のクリスマス時期であったこともあって、歴史地区は昼過ぎから大勢が集まり、歩くのが困難なほどに。教会や博物館、城塞や地下遺跡など、歴史的蓄積が厚く、見どころはたくさんありますが、何よりも生活が道路にはみ出し、溢れ出て、そしてバイクと車が行きかう、急傾斜地にある住宅地の細い路地にこそ、この都市の特質が集約されているように感じました。
イタリア南部の歴史地区マテーラ。洞窟と切石積みのサッシ住居が険しい地形の上にランダムな造形を重ねたヴァナキュラー建築群よりなる奇景。人がその土地に合わせて住まう逞しさと厳しさが、今は美しい観光地として飾られていて、遺産化の意味を考えさせられる地区でした。二日間にわたって色々なルートを巡りました。
同じく世界遺産となっているアルベロベッロ。車を運転しながらこの都市に近づくにつれて、独特の石積みの円錐形屋根の建物が増えていきます。主要な集落は北面した斜面地に。採光の観点からは疑問もありましたが、対面からの全景はとんがり屋根が一面に広がる他にはない光景。マテーラと同様に、多くの建物が観光客の宿泊用に改修され、またレストランやお土産物店となっていますが、一部には現地の生活も継承されているようです。
アマルフィーやポジターノなどの魅力的な海岸都市が連なる半島にも見どころが多く、今回は数日間で駆け抜けてしまいましたが、ぜひ再訪したい地域です。今回は「神々の道」とも呼ばれるトレイルの走破が最も印象に残りました。往復18kmのルートを約10時間かけて歩き、後半は日も落ちて暗闇の中をスマホの光を頼りに抜けることとなりました。半島の海岸線を走る道路は狭く、夏のハイシーズンは渋滞で大変なことになりそうですが、急傾斜面に立ち並ぶカラフルな建物が上から降ってくるような景観が連なるこのルートは魅力的です。
最後にグロットレとロコロトンド、車旅の途中で立ち寄った歴史都市です。どちらも新旧市街地がセットになった小さな丘陵上の都市。ロコロトンドは街中が美しくクリスマスラッピングされて来訪者に開いているのに対して、グロットレは静かに時を重ねてひっそりと寂びていくような。それぞれの美しさがありますが、なぜこれほどに対照的な状況に至ったのか。。。グロットレは最も印象深く、こうした小さな歴史地区こそ、魅力が多く詰まっているように感じました。
この町の訪問は、今後のより本格的な調査の方向性を考える貴重な体験をもたらしてくれました。
以下、ロコロトンド
以下、グロットレです。
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