ベトナム,オケオ考古遺跡の世界遺産申請

ベトナム政府が準備を進めている「オケオ遺跡群(Óc Eo–Ba Thê Archaeological Complex)」の世界遺産申請に関連して,現地視察と専門的助言を行うミッションに参加しました。

オケオ遺跡群は,私自身の古代カンボジアにおける研究とも密接な関係があり,長年の念願がかなって現地を訪れる機会になりました。


扶南政体とオケオ文化

オケオ遺跡群は、現在のベトナム南部、メコンデルタ地帯に広がる考古遺跡群です。
主に1〜7世紀頃に栄えたオケオ文化に関連し、古代国家「扶南(Funan)」の時代を理解するうえで欠かせない存在とされています。

 

この地域は、低湿地と水路が張り巡らされたデルタ環境にあり、バテ山の麓には,古代から人びとは水とともに生き、矩形の都市や港を築いてきました。
現在では一面の水田である山の東側には、寺院、居住地、工房の痕跡が発見されており,さらに周囲に点在する衛星都市や港湾都市とは水路で接続されています。
地域全体の構成資産によって,古代東南アジアにおける「港湾都市」姿を今に伝えています。


世界史の中のオケオ

 

オケオ遺跡群の最大の特徴は、インド洋と南シナ海を結ぶ海上交易ネットワークの要衝であったことです。

 

出土遺物の中には、1) インド由来の宗教美術,2) ローマ世界とのつながりを示す品々,3) 中国や他の東南アジア地域との交流を示す資料などが含まれており、オケオは古代世界をつなぐ結節点であったことが分かります。


今回の協力活動について

今回のミッションでは、2026年1月に現地を訪問し、以下について行いました。

  • 遺跡の現場における保存管理状況の確認

  • 世界遺産推薦書と管理計画の書類の編集提案

  • 将来の審査(イコモス現地調査)を見据えた助言

 

「遺跡の価値が正確に、かつ誤解なく伝わるか」「登録後も、遺跡が適切に守られる仕組みになっているか」関係者との対話により確認を進めました。

推薦書の内容はすでに高い完成度にありましたが、地図表現、用語の整理、歴史的説明の分かりやすさ、保存管理に必要な記述などについて、世界遺産の推薦書のルールや定義にも基づいて確認作業を行いました。

各サイトでは遺産の露出展示のための工事が急ピッチで進められていましたが,低地に位置する遺構では、地下水や湿潤環境が懸念され、 発掘して「見せる」ことが、保存上のリスクになる可能性が推測されました。公開と埋め戻しての保存とのバランスや、公開後のモニタリングのあり方など、慎重な検討が必要とされる点も認められました。

その他,周辺開発や農業活動の遺産や景観への影響と,地域の持続的発展とのバランスがとれた取り組みを進めていくために,遺産影響評価を導入することや来訪者の受け入れ態勢を整えることなども重要な検討事項となりました。


今回のミッションでは,主要な考古学サイトを一通り巡り,また関連するオケオ文化の遺産も訪れる機会をいただき,この時代の外来文化の受容と,東南アジアの初期的な文化創造の在り方について学ぶ貴重な機会となりました。一面の大稲作地帯であるメコンデルタに堂々と位置するバテ山は今も昔も重要な地域のランドマークとして精神的な支えとなり,人とモノを集めていることを体感しました。

 

この考古学遺跡が世界遺産として近い将来登録されることを願っています。