2026年1月15日〜20日にかけて、博士後期課程2年生の陳威諭がネパール・ポカラにて開催された CIPA Heritage School 2026 に参加しました。会期中は、文化遺産を対象とした3D計測・モデリングの基礎から現場実習までを集中的に学び、あわせて遺産の保全に関する国際的な議論に触れる機会となりました。本稿は,陳威諭による参加プログラムの報告です。
CIPAについて
CIPA(CIPA Heritage Documentation)は、文化遺産の記録(Documentation)に関する国際的な学術ネットワークであり、写真測量・測地・3D計測などの分野と、文化遺産保全の実務・研究をつなぐ役割を担っています。Heritage Schoolは、その知見を共有し、現場での計測・記録・データ処理を集中的に学ぶための教育プログラムとして位置付けられます。
CIPA Heritage School 2026での学び
本スクールには、CIPA PresidentのFulvio Rinaudo教授、Co-chairのAndreas Georgopoulos教授をはじめ、CIPA関係者およびTribhuvan大学の教員等が講師として参加しました。参加者は世界各地の13か国から集まりました。
今回のHeritage Schoolでは、文化遺産の 3D Surveying and Modelling を主題として、講義と実習の両面から学習が進められました。講義では、文化遺産ドキュメンテーションの考え方を確認し、とくに精度の高い測量・記録を成立させるためのControl Networkの設計について理解を深めました。
実習では、TLS、SLAM LiDAR、写真測量(Photogrammetry)、UAV、トータルステーションおよびGNSSなど、複数手法を組み合わせた現場記録を体験し、最終的にはグループでデータ処理とモデリングまでを行いました。限られた期間ではありましたが、「計画→計測→処理→成果化」という一連の流れを、実作業として把握できたことが大きな収穫でした。
カトマンズの谷(世界遺産)の訪問
Heritage Schoolの後には、世界遺産 「カトマンズの谷」 を訪問しました。カトマンズの谷はアジアの文明の交差点に位置し、ヒンドゥー教と仏教の7つの遺跡群と、3つの聖なる都市(カトマンズ、パタン、バドガオン)の住宅地・宮殿の地域から構成されています。そこから、ネパールの芸術の絶頂期を垣間見ることができます。
巡礼地、寺院、神社、沐浴場、庭園などは130にも及び、それらのすべての場所が、双方の宗教徒から崇拝されている点が大きな特徴です。現地では、狭い街路の中に多様な宗教建築や信仰の装置が織り込まれ、都市景観そのものが信仰と生活の積層として成立していることを実感しました。
2015年地震後の復興と、地域社会による遺産の支え方
今回、現地で文化遺産に関わる方々の案内を受け、2015年の大地震以降の被害と修復の状況についても理解を深めることができました。復旧は行政や専門家の取り組みだけでなく、信仰共同体としての結束や、住民の自発的な寄付・支援など、地域の力によって支えられている側面が強く印象に残りました。
遺産が「保存される対象」にとどまらず、日常の信仰や生活の中で継承され、復興のプロセスそのものが地域の実践として積み重ねられていく——その姿は、遺産が社会に根差して機能する一つのあり方を示しているように感じました。
本Heritage Schoolを通じて、計測・記録の技術だけでなく、遺産をめぐる多様な視点や現場のリアリティに触れることができました。主催者・関係者の皆様、そして現地で案内・助言をくださった皆様に心より感謝申し上げます。ここで得た学びを、今後の研究と現場活動に活かしていきたいと思います。
(D2 陳威諭)

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