衝撃的なニュースであった。世界遺産「琉球王国のグスク及び関連遺産群」の中でも最も象徴的な遺産であった首里城の火災である。正殿に加えて,北殿,南殿が見る影もなく全焼した映像にくぎ付けになった。
昨年度まで,文化庁の世界遺産の調査官として琉球グスクの担当をしていたことから,毎年一度はこの世界遺産の構成資産であるグスクを巡り,保存・活用のための協議会にも出席をしてきたが,世界遺産登録20周年を来年にひかえて,周年事業として大きく盛り上げていこうとしていた矢先の大きな損失である。首里城の復元工事は沖縄復興の重要なシンボルとなる事業であり,沖縄県民ばかりでなく,国民の多くにも多大な喪失感をもたらすこととなった。
写真は数年前に訪れた際の正殿の漆塗りの修復工事の様子。琉球の文化と気候や環境を反映したダイナミックでカラフルな破風飾りを間近に見て,強い太陽光線に対峙する力強さに圧倒されたことが記憶に鮮明である。
パリのノートルダムがフランスの官民に加えて国際的な協力を総集結して,再建に臨んでいることを引き合いに出すのは不適切かもしれないし,再建について検討するのは尚早ではあろうが,沖縄にとって,日本にとってこの建築遺産がもつ重要性をいかにして継承していくべきか,十分な議論がこれから展開されることだろう。過去に再建された首里城にも増して,多くの人々の心の支えとなる遺産のあり方を創造していく必要があろう。
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