インドネシアでもバリはヒンドゥー教の島として独特の宗教文化を保持しています。またインドのヒンドゥー教とは異なって,当地の信仰と集合した点も魅力です。
今回,駆け足ではありますが,バリの宗教遺産とそれに深く関連する生活文化に触れる機会を得ました。
この写真は,バリのヒンドゥー信仰の総本山となるブサキ寺院。背後のアグン山との立地関係などもふまえて,日本の富士山における浅間神社と位置付けが重なるように思われました。
バリの文化観光の中心であるウブドの北側にはいくつかの寺院が営まれていますが,そこでは伏流水が湧き出す源泉を信仰の核として位置付けている寺院がいくつかあります。
多くの住民がこうした寺院で清めの儀礼を今でも行っています。
源泉の周囲に形成された寺院。白い衣を纏ったヒンドゥー僧侶が住民の祈りを伝える役目を果たしています。静かな鐘の音が周囲の自然に溶け込んでいく空間です。
こうして流れ出す聖水は長年にわたって地域住民の協働によって形成され,深い谷地を丁寧に張り巡らされた水路によって棚田へと分水されます。
ウブドからほど近い世界遺産にも登録された棚田は観光化が進んで景観が乱れつつありますが,観光客が世界遺産に集中することで,バリ島の美しいその他の棚田の景観が保護されているようでもあります。
ヒンドゥー教が色濃く残されるバリですが,仏教寺院もいくつか遺されています。このストゥーパはバリでも最も古いものとされています。
現在では新しい伽藍の中に組み込まれていますが,ストゥーパの外形や一部に遺された装飾は古式を感じさせるものです。
6,7世紀の建立に遡るということですが,そのような趣があります。
過去にはヒンドゥー教と仏教は友好的に併存する時代があったのかもしれません。ヒンドゥー教窟と仏教の磨崖の仏塔とが隣接するサイトもあります。
いつもは観光客にあふれるゴアガジャには,大型の磨崖の仏塔が崩落した状態で遺されています。
仏塔の彫刻装飾の一部は,大陸部東南アジアの7世紀頃のものとも通じるもので,インド亜大陸から両地域に同時並行してこうした造形芸術が移入された様子が伺われます。
バリの集落構造や各戸の構造もまた,当地の宗教観念に反映しており興味深いものがあります。
過去30年程の間に,少しずつ集落構造や家屋の形式や材料に変化があることは報告がありますが,それでも伝統的な思想を大事にしている様子が感じられました。
宗教遺構やそれに伴う農地の形成システムに加えて,こうした集落や民家の研究はまだまだ可能性のある地域だと認識しました。
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