大工職人の育成学校「職藝学院」

富山県にあります伝統建築の大工職人の育成学校、職芸学院へ視察に伺いました。この学院で准教授をされている森本英裕先生とは、同窓となる研究室の出身というご縁で、学院内の施設から、この学院が手掛けたいくつかの現場の仕事など、たいへん充実した見学をさせていただきました。
この学校では、2年から3年間の講義と実習を組み合わせたカリキュラムを経て、毎年20名強の卒業生が輩出されています。
2年目以降の実物実習では、学校が委託を受けた修理や新築工事に学生が参加して生の現場で棟梁からみっちりと指導を受ける他では見られないユニークな教育システムです。
実習の現場では、棟梁の下で確実な仕事をこなし、伝統的な大工技術を身につけていきます。また、学生の無償労働力もあって、破格の低費用で高品質な仕事が実現されています。今回の視察では、高岡市伏木期初資料館(登録有形文化財)での修復・復元や、富山県民会館の分館である豪農の館、内山邸(登録有形文化財)等をはじめとした、これまでに手掛けてこられた事業を見せていただきました。

こちらは内山邸の蔵を復元した時の実習の様子。こうした原寸での仕事を大工棟梁とともに毎年こなしていきます。このような経験が学生時代にできるというのは、うらやましい限りです。

現在進められている事業の現場も視察させていただきました。こちらは市指定文化財の竹島家の土蔵。これから調査が行われ、本格的な修復工事が実施されます。
このように、毎年多数の事業が並行して進められており、依頼がさばききれない程とのこと。

 

 

これまでの仕事と報告書の一端を見せていただきましたが、優秀な教員と現場の棟梁が揃っているからこそ実現できているこの教育システム。なかなか他で真似することは難しいと思いますが、この方式は日本における伝統的な技術者の育成を考えるうえで、大変な可能性を持っていると感じました。