ユネスコ無形文化遺産へ「伝統建築工匠の技」登録決定

ユネスコの政府間委員会により、12月17日に日本が申請をしていた「伝統建築工匠の技」の無形文化遺産への登録決定されました。

 

宮大工や瓦や茅葺き、漆塗や彩色等、伝統建築の継承に要する様々な技術の重要性が認められたことになりました。この申請案件は、文化庁の文化遺産国際協力室で仕事をしていた時期に、すぐ隣接するチームが取り組んでいたこともあり、登録のニュースは大変うれしいものでした。

特に、諮問機関が有形遺産と無形遺産の不可分性や、継承に要する材料の循環的生産のためのふるさと文化財の森に言及されている等、この申請で日本が込めたメッセージが十分に伝わったことはたいへん嬉しいところです。

伝統工匠の技術や継承の仕組みが極めて高い水準にあることは確かですが、それらが脆弱な環境にあることも一方では事実です。申請書の中でも、各技術の継承が困難となりつつあること、技術者の減少が危惧されていること、が繰り返し示されています。

 

こうした技術継承を、重要建造物等の指定文化財のみを対象として進めていくことには難しさもあり、よりすそ野の広い対象で、こうした技術が利用されつつ、技術者や材料供給のサイクルの安定化を図っていくことが必要だと思われます。

そのためにも、今回の無形文化遺産への登録が国民の関心をより高め、歴史的建造物の良さ、魅力を改めて発信し、共感を得ていくための機会とすることが重要になるでしょう。

 

今回の登録のニュースは「和食」や「来訪神」と比べると、やや盛り上がりにかけるところもあるように感じます。関係者人口や地域が限定的であること、直接的に観光等の経済活動に寄与しにくいこと等がその理由なのかもしれません。しかし、伝統技術を分かりやすく、見える化し、無形でありながら有形の伝統的建築と併せて鑑賞し、理解してもらえる工夫をする余地が大きいことも確かです。ぜひ今回の登録をきっかけに、無形文化遺産の本来的な趣旨である「継承」の仕組みが充実していくことを願っています。

 

ユネスコのホームページに掲載された登録ニュース(動画付き)

Traditional skills, techniques and knowledge for the conservation and transmission of wooden architecture in Japan - intangible heritage - Culture Sector - UNESCO