成都市考古学研究院への訪問と講演

四川省の中心地として長い歴史を有する成都市における考古学研究の拠点である成都市考古学研究院を訪問しました。

もともとはホテルであった建物を、博物館と研究所としての機能を併せ持つ施設として改修したもので、訪問時には開館準備中の段階でした。過去10年間で成都市内では地下鉄網が形成され、各線の延伸と新設経路が急速に更新されていますが、現在工事中の地下鉄駅はこの施設と直結する予定で、その工事が終わり次第に、博物館は正式にオープンする運びとされています。

訪問時には、博物館は限定公開とされており、事前のオンライン申し込みの方が、1日複数回のグループツアーで見学しているとのこと。博物館は、前半で考古学調査や分析の方法や技術を紹介するもので、学生ツアーを対象にデザインされていますが、かなり専門的な内容も含むものとなっています。後半は成都市における主要な考古学的発見とその出土品を展示するものです。

今回はこの研究院が発足してからの半世紀の期間にわたって、研究者として携わってこられた現在の副館長に案内いただき、これまでの調査の思い出などもお話しいただきながら回る機会をいただきました。博物館の最後には本研究院が取り組んだ調査が走馬灯のようにパネルとして展示されていますが、世界最大、世界最古、世界唯一、とう文字が各調査成果の見出しには並んでおり、実に多くの貴重な成果が達成された研究院であるか発信されています。

博物館の上層階には研究所が入っていますが、開館したばかりということで、最新の分析機器がずらりと並んでおり、現場試料や研究資料はまだほとんど入っておらず、まさにこれからという状況でした。

中国国内で4番目の考古学施設ということで、考古・建築・地理の各調査室の他、金属・木材・土器・繊維・土壌・動物遺体・植物遺体などの保存科学の分析ラボがそれぞれに充実した機材を備えていました。

研究所員は建築20名、保存科学50名、考古10名程ということで、考古学については外部組織と連携して活動することが多いようで、年齢的には2030代の方が多くを占めている印象でした。

この研究院で研究所員の方へ日本の文化遺産の管理や保存、近年の制度変化や活用への展開等について話をさせていただきました。文化遺産の保存と経済効果や地域参加などに関する質問が多く、制度や技術的な課題とは異なる関心が中国でも高いことを感じました。

 

 

この施設における研究所での活動が本格的に軌道に乗った段階で、改めて訪問する機会が得られればと思います。