2009年に日本で初めて世界ジオパークに認定されたサイトの1つである洞爺湖有珠山の再審査調査に同行しました。調査員2名はいずれも中国の専門家で、5日間の調査期間。
かねてから念願だった昭和新山に途中まで登らせていただく機会もありました。
今回は明治以降に複数回の噴火を経験し、その災害からの学びを地域資源とする減災教育の活動紹介することを目的に、主として有珠山に関連する資産を多く巡りました。
また、2021年に世界遺産に登録され、このジオパークの文化資産に組み込まれている縄文遺跡群の構成資産、そして無形遺産であるアイヌの伝統文化拠点等を合わせて視察しました。
自然と人間の営みを一体のものとして捉える世界観がベースとなる縄文文化やアイヌ文化は、こうした火山噴火という不可抗力を前提とした環境において形成されるべくして生じたことを感じるばかりでした。また、各所の災害跡地は減災と自然再生のシンボルとして保存展示されており、それらは圧倒的な迫力がある無言の語り部でありますが、マイスターによる解説がさらにその意味や背景を浮き彫りにすることで、来訪者に深い理解をもたらす仕組みが整えられていました。
このジオパークでは減災教育の担い手となる火山マイスターをこれまでに64名輩出しており、今回の調査でもいくつかのサイトでマイスターが案内を担当し、小学生や中学生などを対象とした教育プログラムの様子を審査員に紹介する形で進められました。
また、昨年から開始されたというジオパークパートナー制度についても紹介され、飲食店のパートナーは審査時のランチ会場の場とされたり、またアクティブアドベンチャーツアーのサイトではパートナーのツアーガイドが案内することで、パートナー制度が多方面でジオパークと連携している実態が紹介されました。
パートナーになると行政発行のマップやウェブサイトに掲載されたり、ジオパーク関連グッズのデザインの技術サポートを得たりというメリットがあり、一方でパートナーはそれぞれの方面でジオパークを広報発信します。こうした互恵関係がうまく機能している状況が紹介され、同様の仕組みが他地域でも展開される可能性を感じました。
既に減災教育プログラムについては高い評価を得ているところですが、次の4年間には、こうした特別な体験を個々の需要に基づいて提供するAdventure TourやTarget Based Tourの開発や、地域の文化や物産を活かしたジオ商品(Geographical Identication)のブランド化といった活動を展開していく考えが示され、今後への期待感も高まります。
行政職員と火山マイスター、地域企業と研究者等の多様なステークホルダーがフレンドリーに連携していることが、多様な取り組みを実現し、またさらなる可能性を創出する原動力になっているように感じました。
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