筑波大学世界遺産学学位プログラムは、エジプトのアレキサンドリア近郊に位置するエジプト日本科学技術大学(E-Just)における遺産科学プログラムと連携して教育プログラムを実施しています。近年は、新型コロナウイルスによる渡航制限等があり、オンラインによる合同ゼミを年に2回程度実施していましたが、このたび現地訪問を伴うプログラムを実施することができました。
筑波大学からはエジプト学を専門とする肥後先生と私が今回訪問し、E-Justでのゼミに参加した他、この機会に両校を接続して双方の学生が研究発表を行うオンラインでの合同ゼミを行いました。
また、E-Justにおける遺産科学プログラムでは、来年からAcademic MasterとPhDコースを開設するための検討が進められており、新たな枠組みでの協力体制について検討しました。
E-Justのプログラムではアレキサンドリア図書館の保存専門家等が在籍しており、高度な実務的技術の開発を目的とした研究に取り組んでいる学生が多くいます。今後は遺物や遺構の保存科学から、より多様な対象を遺産として捉えて社会的に活かしていくべく遺産学としての枠組みを広げる計画が検討されており、そのための連携のあり方についても協議しました。
E-Justの学生が所属しているアレキサンドリア図書館における貴重図書の修復ラボや、市内の博物館を訪れた他、キャンパスから30分ほどに位置する危機遺産Abu Mena遺跡やその他ローマ時代の考古学サイト、カタコンベ等を訪れ、こうしたサイトでの実地研修について検討しました。
アレキサンドリアは世界の7不思議にも数えられるファロス島の「大灯台」がありますが、これが倒壊した後に再建されたとも伝えられるカーイト・ベイの要塞もまた印象的でした。
カイロ近郊ではギザとサッカラを訪れ、E-Justとの共同研究の可能性について検討しました。ジェセル王のピラミッドコンプレックスは、建造物が石造化して様式化された人類史における画期となる場でもあり、復元的に整備されている遺構各所から、その痕跡を伺うことのできる建築史にとってとても重要な遺構です。今回は、エジプト学の専門家二名に案内していただき、ピラミッドコンプレックスとその周辺の貴族墓等において死後の世界と現世との接続の思想についてお伺いできたのは本当に勉強になりました。
エジプトではGrand Egyptian Museumへの日本の支援もあり、こうした文化遺産の分野において多角的に連携を深めていくことが期待されており、本学プログラムとしてもE-Justとの協働を通じて貢献できる可能性を探っていけたらと思います。
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