2023年に世界遺産にも登録されたドヴァラヴァティーの中心的な痕跡であるSi Thep遺跡群を訪れました。バンコクからはかなり離れていることもあって、訪れることはやや困難ですが、一間の価値ある遺跡群です。
Si Thep遺跡群の中心は東西にやや長い楕円形の環濠内の地区で、ここには多数の仏教・ヒンドゥー教寺院が分布しています。ただ、そうした中でも印象的であったのは、環濠の外、北側に位置するKhao Klang Nok寺院です。
この寺院は7世紀に建立されたと考えられている仏教寺院で、方形の大きな基壇の上には巨大なストゥーパを載せていたと推測されています。一辺64mという基壇には複数の寺院立面を模した装飾が付されています。この基壇壁面は、かつては漆喰装飾で覆われていたようです。
2008年から開始された発掘調査によって、この巨大なマウンド上の堆積土と樹木が取り除かれ、その結果、この遺構が出土したとのこと。柱穴も確認されており、基壇上には木造架構が存在した可能性も推測されています。また、あわせて数点の仏像も出土したようです。
この遺構が巨大であること以上に重要なのは、周辺から24基もの付属する遺構が発見されていることです。現在でもこれらは発掘調査が進められていました。これらの多くは中央の巨大ストゥーパの東西、南北軸上におおよそ位置しているようですが、軸線上に位置しないものも複数存在します。
こうした衛星的な寺院はおよそ8m四方の遺構が多いですが、現在発掘調査が進められている遺構は、それよりもはるかに規模が大きなものでした。
こうした衛星寺院にはより小型のストゥーパやダルマチャクラを配していたようです。このストゥーパは中央の石積みが欠落しており、ストゥーパ内部に空間を設けていた可能性も伺われます。
こうした衛星寺院も含めた一体的な幾何学配置をもって、仏教的世界観が広大な地区全体で現出されていた様相が想像されます。また、中央寺院のストゥーパについても、複数の復元案が提示されているようです。
推測される建立年代によって、ストゥーパの形式は異なってきますし、また基壇上に検出された柱穴の解釈によって、木造架構との組み合わせについても検討される必要があります。
復元イメージに絶対的な解答が見つかることはないと思いますが、こうした議論が関係する研究を進展させること期待されます。こうした巨大仏教施設が7世紀にドヴァラヴァティーにおいて発明されていたということに、驚くばかりの訪問でした。
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