「文化遺産論」でティーチング・フェロー(TF)の講義

20241114日と21日の2回にわたり、博士後期課程3年の袁星雅が「文化遺産論」の授業をティーチングフェロー(TF)として担当しました。2回の共通テーマは「大規模開発事業の影響から文化遺産保全を考えよう:文化遺産保全における影響評価制度のあり方」です。それぞれの講義において、文化遺産保全における影響評価制度をテーマに、多角的な視点から実践的な議論を展開しました。

1114日:「影響評価(Assessment)」の理論と文化遺産への適用

1回目の講義では、この講義は、文化遺産保全に新たな視点を提供するとともに、学生が各自の研究分野に応用できる包括的な視野を養うことを目的とした。環境分野で用いられる「影響評価」というツールに着目し、その手法と制度について概説しました。具体的には、以下の内容を取り上げました:

  • 資源の無秩序な利用がもたらす問題と環境影響評価(EIA)の重要性
  • 明治神宮外苑の再開発事業やリヴァプールの世界遺産登録抹消を事例に、文化遺産保全における影響評価の適用可能性と課題を分析
  • 戦略的環境アセスメント(SEA)の重要性と影響評価制度を強化する方法の提案

 

講義を通じて、文化遺産保全における影響評価の役割と限界について学生たちと共に考察しました。

1121日:模擬住民説明会による実践的学び

2回目の講義では、長崎県西海江島洋上風力発電事業を題材にした模擬住民説明会を実施しました。この授業は、学生が開発事業者と地域住民の役割をそれぞれ体験し、文化遺産保全における利害関係者間の対話の重要性を学ぶことを目的としていました。

模擬住民説明会の進行は以下のようにしました:

  • 事業者グループ発表:洋上風力発電の経済的メリットや地域振興の可能性を主張し、影響を回避するための具体策を提案。
  • 地域住民グループ発表:文化遺産や生活環境への影響を指摘し、さらに詳細な調査や代替案を求めた。
  • ディスカッションセッション:双方の意見を共有し、合意形成を目指して議論を行いました。学生たちは異なる立場から議論する中で、多様な視点を体験しました。

 

2回の講義を通じて、文化遺産保全の複雑さや、影響評価制度の可能性と課題について深く議論することができました。学生たちはそれぞれの研究分野で活用できる多角的な視点を得たように感じています。文化遺産を守るためには、開発と保全を対立させるのではなく、互いに歩み寄る姿勢が重要です。

今回の経験を生かして、引き続きこのテーマについて考えを深めていく必要性が考えられます。最後に、積極的に議論に参加し、講義を盛り上げてくださった学生の皆さんに感謝を申し上げます。

(D3 袁星雅)