
世界遺産「明治日本産業革命遺産」の拠点施設である産業遺産情報センター(東京・新宿区)を訪問し,ジェネラルマネジャーの西川三津子氏より解説とご講義をいただきました。
この世界遺産は、日本の近代化を支えた八つの地域に点在する23の構成資産から成る「シリアルプロパティー」として登録されています。パネル展示や映像資料を活用しながら、構成資産は個々にどのような歴史を有し,世界遺産としての価値にどのように貢献し,また各資産がどのように連携して,それらの総体として日本の産業発展に寄与したのか体系的に解説いただきました。
世界遺産という枠組みが日本に導入されたことにより、文化遺産の保存の在り方も大きく展開してきました。個々の資産を保護する従来のアプローチから、複数の文化資源を有機的・多義的に結びつけて理解し、保存し、活用するという新たな視点へと発展してきたと言えるでしょう。まさにこの「シリアル化」という概念こそが、「明治日本の産業革命遺産」が持つ包括的かつダイナミックな価値の理解を可能にしているのです。
また質疑の対話形式で,世界遺産登録にいたる長年にわたる国内外の専門家や多様なステークホルダーによる協働の軌跡,産業遺産としての建造物の価値の所在とその保存方法,センター設立の背景とその目的,そして情報提供にあたるガイドや語り部といった人を介したインタラクティブなインタープリテーションの仕組みについても詳しくご説明いただきました。
本世界遺産は、構成資産ごとにガイダンス施設が設置され、それぞれが情報発信の拠点として機能しています。これらの施設と資産が一体となって発信するストーリーは、地域ごとの特性を超え、日本全体の産業近代化という壮大な歴史的プロセスを可視化するものです。今後は、こうした全8エリアにまたがる資産群全体に視野を広げ、その総体としての価値と、そこから導き出される保存と活用のあり方について、さらに深く学び、理解を深めていきたいと思います。
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