
世界遺産学学位プログラムの修士1年生を中心とした学生と共に,碓氷製糸場と富岡製糸場を見学に行きました。
碓氷製糸場は現役で稼働している日本最大の器械製糸工場であり,ここでは繭の乾燥から製糸までの様々な工程を見学させていただくとともに,現在の繭生産や工場経営の実情について幅広い解説をいただきました。

繭の種類や買い入れにあたっての補助金等の経営面についてのお話を伺うとともに,繭の搬入から,乾燥,選繭,煮繭,繰糸といった各工程の作業と機材やその補修や改修の技術について直接見学させていただくことで,その流れや規模を実感することができました。

ご案内いただいた土屋真志氏は,富岡製糸場の世界遺産登録にも早くより携わってた方でした。今回は,登録にかかる検討で多数の構成資産から最終的な4資産へと絞り込まれた経緯をはじめとして,登録後に養蚕民家が地域で増えつつあること,そして今年1月に開催された10周年記念シンポジウムでまとめられたヘリテージ・エコシステムの考え方についてなど,世界遺産と関係する幅広い話題をお話しいただきました。
将来的には碓氷製糸場を世界遺産の構成資産として追加したい,という夢を力強くお話しされれていたのが特に印象的でした。こうした可能性を追求することが,世界遺産の価値をさらに深め,また広げていくことになると思われ,ぜひ応援,協力できたらと思いました。

続いて,群馬県立世界遺産センター(SEKAITO)を訪れました。シアターでのVR解説はガイドさんとフルCGとが連動した魅力的な仕組みが組み込まれています。
日本遺産や絹産業遺産群の取り組みについても紹介があり,世界遺産を入り口に,広域に関心と足を延ばすきっかけが提供されていますが,これについてはさらなる工夫の余地もありそうでした。

富岡製糸場では,通常は公開されていないエリアを含む各所を富岡製糸場総合研究センターの片野雄介氏よりご案内いただきました。
また,保存科学の松井先生からは煉瓦の劣化状況やその対策について現場での解説をいただきました。

官営時代から民間払い下げ以降の長期にわたる経営やそれに伴う施設や技術の更新の歴史について,繭倉庫の展示と共に解説いただきました。また,近年実施された西繭倉庫の整備工事,現在進行中の乾燥場の工事,今後整備が予定されている首長館のにおける検討課題についても説明いただきました。
遺産の管理は静的に現状維持されるばかりでなく,創造的に新たな機能と空間を付加しつつ,その魅力と価値を高めていくものであることを実感する良い機会となったように思います。
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